生命倫理

今日の読書。

いのち 生命科学に言葉はあるか (文春新書)

いのち 生命科学に言葉はあるか (文春新書)


クローン羊ドリーに始まる(本当はもっと前からあったのだが)一連のクローン技術が、こんなにも人間の根幹にかかわる倫理的な問題を孕んでいると初めて知った。非常に考えさせられた本であった。今の子供らにも一読を薦めたい。

現代の死生観に関する鷲田氏の発言はなるほどと思った。

  • ...そもそも生きるということは、本来自分ではどうしようもないもの、操作もできないしコントロールもできないものにぶつかって格闘して、多くの場合断念して、もう、これはどうしようもないわと、それが生きることのリアリティーだと思うんです。子供を育てると一番よくわかるんだけど、こっちが思うようにしようと思っても絶対だめ。期待が過剰だから裏切りも過剰になる。だから、リアルって何かというと、自分の周りのものは思いどおりにならないということを思い知らされる経験だと思うのです。夫婦だったそうだね。愛し合って生きようと思ったのに、どうしてここまで一言一言がぎりぎり気に障るんだか。 (p.44)

これを受けて著者の最相氏は、

  • 死を恐れるというのは、人間にとって一番どうしようようもないものだからです。 (p.45)

と応えている。あぁ、なるほどなぁ。人間は現代のサイエンスをもってすればあらゆることが人間にとって、あるいは、自分にとって都合のよいものになると思い込んでいるなと思う。わがままも元をたどれば、思いどおりにいかない経験が少なすぎるからなのかなぁ、と思う。


いのちについて、再考させれた本であった。この本を推薦図書に入れている大学は、さすがだと思う。